年頭挨拶

  酒田商工会議所
    会頭 弦 巻   伸
      

平成二十九年の新春を寿ぎ、謹んで新年のお慶びを申しあげます。

昨年は、英国のEU離脱決定や米国大統領選挙でトランプ氏の勝利、韓国大統領の弾劾可決など難民・移民問題やグローバル化への反発など内向き思考が台頭する国際情勢となってきました。

このような中、リオデジャネイロ・オリンピックが開催され、世界中のアスリートがそれぞれの競技を通じて多くの感動を与える祭典が催されました。

国内においては、熊本地震や鳥取地震、北海道への相次ぐ台風上陸など大きな災害に見舞われました。

また北海道新幹線の開業や伊勢志摩サミットの開催、ポケモンGOや豊洲問題、天皇陛下のお気持ち表明など話題がとても多い一年であったように思います。

当地においては、九月に「第三十六回全国豊かな海づくり大会〜やまがた〜」が開催されました。天皇皇后両陛下が当市に行幸啓されたのは、十四年ぶりのご来酒となったことから、地域を挙げて歓迎の意を表しました。

これに先立ち、酒田まつりには、東京ディズニーシー開園十五周年の記念行事として、キャラクターのパレードがあり、大勢の見物客で賑わいました。

さらに、九月九日には鳥海山・飛島エリアが日本ジオパークに認定されるなど、関係自治体間の連携強化が深まるとともに、観光資源の厚みにも期待が持たれました。

 

   観光客誘致の促進について

 当地域の最大の課題は、人口減少・少子化問題に収斂されるのではないかと考えます。国立社会保障・人口問題研究所が平成二十五年三月に発表した「日本の地域別将来推計人口」では、当市の人口は平成五十二年には、七一、一七〇人と、人口減少が急激に進展する推計を発表しております。

人口減少・少子化に伴う課題は、経済規模の縮小や求人確保難など企業経営に甚大な影響を与えます。

この対策として、移民や移住、交流人口の拡大などがあげられますが、わが国の場合はEUの実情や海に囲まれた国土形成から移民受入は国民感情から勘案して難しい取り組みと思われます。

交流人口の拡大に向けては、二つの側面があろうかと思います。

第一は、訪日外国人旅行者の増加を図る取り組みです。

政府は、平成三十二年訪日外国人旅行者を四千万人とする目標を掲げ、さまざまな施策を打ち出しております。このうち五百万人が訪日クルーズ旅客として見込んでおります。

第二は、国内のクルーズ人口の増加です。これまで酒田港には、日本籍のクルーズ船「飛鳥U」や「ぱしふぃっくびいなす」などが寄港しておりますが、近年、外国船籍のクルーズ船が日本各地の港を発着港としてクルーズ運航に取り組まれております。外国船籍所有企業のクルーズは、一泊あたりの宿泊費も手頃な価格で船旅を体験できることから日本人の旅行者掘り起こしに力を注いでおります。

酒田港を有する当地は、クルーズ船の受入について、地域資源としての強みを有しております。

課題は、受け入れ態勢です。日本人旅行者が寄港地で求める観光体験と訪日外国人旅行者が求める観光体験には違いがあります。外国人旅行者と一括りにするのではなく、アジア人、欧米人の大分類からアジア人であれば韓国人、中国人など国毎に違う対応が求められております。また、外国籍のクルーズ船には、外国籍の乗組員が乗船していることから、これらの船員に喜ばれる港としての評価を得ることも重要な要素となっています。

これらのきめ細やかな対応について、関係先と連携を密にしながら取り組んで参りたいと考えております。

また「道の駅」は、その求める機能や形態、街中施設との役割分担なども明確にする必要があります。さらに「鳥海山・飛島ジオパーク」の認定を受け、ガイドの育成や組織化の取り組みなどにも着手すべく常設委員会への諮問事項としてあるべき姿をまとめたいと考えております。

 

   求人対策について

  人口減少・少子化の影響は、企業運営の根幹を揺るがす問題です。

 当所は、高校生の地元定着率が県内八ハローワーク管内で最低であることから、各高等学校や行政機関と連携し、地元定着促進を図るために、要望活動やさまざまな事業に着手してきました。

企業としてできることに早期の求人票提出がございます。おかげさまを持って、従前の地元定着率が五十八%台であったのが、今春三月卒業予定者については、六十六%程度まで引きあげることができました。しかし、県平均が七十七%でありますので、まだまだ地元定着を図る取り組みが必要です。

また今春の卒業予定者の職業選択は、三・二二倍と一人の求職に対して三社の求人がある状況となっています。高校生は、職業選択が広がりますが、企業側からみると、求人を出しても応募が無いと状況になり、そして、この傾向はこれからも続くことになります。

山形県庄内総合支庁地域産業経済課においては、酒田・鶴岡の大学三年生の保護者に対して地元企業求人ガイドを届ける事業に取り組まれております。当所としてもガイド掲載企業の確保に向けて積極的に協力を行っております。

加えて、行政が取り組むUIJターンや移住対策に産業界としてできることは何かを考えたときに、今すぐ求人を出すのではなく、将来「充足したい人材像」を提示して、移住者などの求職マッチングに対応できる仕組みづくりが必要ではないかと考えております。

技術者・技能職の確保も深刻な問題となっています。長期的対応としては、技能の伝承が途絶えないように、高等学校の学科編制についても、産業界の声を伺いながら、行政に働きかけて参りたいと存じます。

 

   酒田産業会館改築について

 酒田産業会館の改築については、会員の皆様には、会費のご負担をおかけすることにご理解を賜り、ありがたく存じます。

改築に向けて、本年度中に酒田市都市計画決定をご承認いただき、測量業務等に着手したいと考えております。

今後、酒田産業会館改築検討特別委員会が中心となって、工事のあり方や寄付金のお願い、運営体制について検討することになりますが、進捗状況については、逐次、会報を通じて会員の皆様にご報告をさせていただきます。引き続きご理解とご協力をお願い申しあげます。

 

酒田商工会議所は、明治三十年四月、全国五一五商工会議所の五十二番目に設立し、今年、創立百二十周年を迎えます。

歴代の会頭はじめ会員の皆様には、先の大戦の影響を受けながらも、今日の繁栄の礎を築いていただきました。

現在も地域を取り巻く前述の三項目の他に、高速交通網の優先的取り組みの絞り込みや酒田港の更なる整備など待ったなしの課題が山積しております。

内部的には、廃業や事業所の地区外移転などで会員数が減少しておりますが、総務委員会で会員拡大運動に取り組みます。会員の皆様からは、未加入のお知り合いの事業所をご存じでありましたら、是非、一言お声かけいただき、事務局までご連絡を賜りたいと存じます。

また、部会・委員会あり方検討特別委員会を設置し、現状に適した組織運営を図りたいと考えております。

さらに、毎月開催しております常議員会も常設委員会のテーマを幅広く検討する場として活性化を図る所存であります。

百二十年の激動する歴史を乗り切った知恵や有形無形の財産を活かし、この難局に立ち向かって参りたいと考えております

引き続き、地域振興の活性化のために、会員事業所のネットワークを通じて、さまざまな事業に取り組んで参ります。

会員各位のますますのご繁栄とご健勝をご祈念申しあげ、新年の挨拶といたします。